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MVアグスタ 栄光と苦悩の歴史 【創立から現在までのまとめ】

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MVアグスタの歴史は古く、「レースでの王者」としての第一期、ブランド消滅から復活し「走る工芸品」「走る宝石」と言われた超高級車を世に送り出した第二期に大きく分かれます。
華々しい歴史を持ちながらも、第二期のMVアグスタは経営面では苦難の多いメーカーでした。

出典:MV Agusta Japan

今年2016年の3月には、また多額の負債を抱え、現在倒産処理手続きに入っているMVアグスタ。
今後の動向はいまだ不明でありますが、この9月4日に新型のF4を発表するとしてその克明な車両画像も公開されています。

そんなMVアグスタの歴史を追ってみましょう。

会社の創立


MVアグスタの歴史のはじまりである「アグスタ社」は、航空機産業の会社として1907年に設立されたイタリアの企業です。
第一次世界大戦、第二次世界大戦に軍需産業を支える会社として大きく成長しましたが、日本と同様に第二次世界大戦の敗戦国として航空機産業はその活動を停止せざるを得なくなりました。

オートバイ製造の開始


敗戦により航空機の製造ができなくなったアグスタ社は、オートバイの製造に乗り出します。
創業者ジョバンニ・アグスタ氏の息子であるドメニコ・アグスタ氏により、オートバイ製造の会社「MVアグスタ」が誕生したのは1945年の敗戦の年でした。

出典:MV Agusta Japan
MVアグスタの「MV」は、「工業」の”Meccanica”と「本社所在地名」の”Verghera”から取ったと言われており、「メカニカ・ヴェルゲーラ・アグスタ」と読んでいたそうです。

ロードレースへの参戦


1945年にバイクの製造を始めたMVアグスタ社ですが、早くも1946年にはロードレースに参戦を開始します。
50年代に入るとレースでの勝利のためにSOHCエンジンを搭載したモデルも登場し、レースでの確固たる地位を形成していきます。

MVアグスタはレースへの研究開発に余念がなく、他社に先駆け革新的な研究も行っており「2ストロークのインジェクションモデル」や「4ストローク6気筒500ccエンジンモデル」なども実験開発していたといいます。

出典:mvagusta

出典:mvagusta

WGP500ccで17年間勝ち続けた唯一のメーカー


ホンダが日本メーカーとして初めてロードレース世界選手権に参戦を開始したのが1958年ですが、MVアグスタはロードレース世界選手権の500ccクラスで、1958年から1974年までなんと年間チャンピオン17年間連続で獲得するという偉業を達成します。ジョン・サーティース、マイク・ヘイルウッド、ジャコモ・アゴスチーニ、フィル・リードという、そうそうたるライダーがMVアグスタのチームに所属していました。

◆ジョン・サーティース選手

出典:columnm

◆マイク・ヘイルウッド選手

出典:alchetron

◆ジャコモ・アゴスチーニ選手

出典:MOTORCYCLES PAGE268

◆フィル・リード選手

出典:MOTO.IT

レースでは素晴らしい戦績を残す一方、ヨーロッパでは60年代に入ると四輪自動車の飛躍的な台頭等によりオートバイの市場は急速に冷え切っていきます。
MVアグスタはターゲットをエンスージアスト層に向け始め、マイク・ヘイルウッドが駆った500cc GPレーサーのエンジンをベースにした750 S Americaなどの名車を生み出していきます。

◆750 S America

出典:wikipedia/750 S America

WGPからの撤退


MVアグスタはレース界で華々しい戦績を残しますが、会社としては財務的に非常に悪い状況でした。
また70年代中期には日本の2ストロークレーサーが台頭してきて、4ストロークのMVアグスタは苦戦を強いられてくるようになりました。
1974年のシリーズタイトルを最後に、それ以降は年間チャンピオンの座を獲得することは再びありませんでした。
そしてとうとう1976年にMVアグスタはレース活動から撤退します。

MVアグスタの戦績は通算3,027勝。
WGPでは270勝を上げ、37回のワールドチャンピオンを獲得するという素晴らしい記録を残します。

MVアグスタの消滅


レース事業から撤退後、市販車販売に更に力を入れるものの経営の回復はなかなか思うように進まず、1977年にはとうとう本業であるアグスタ社の航空機事業に一本化し、MVアグスタ社のオートバイ事業は閉鎖する決断をくださねばならなくなってしまいます。

そうして市販車でもレーサーなみの高性能並列4気筒エンジンを積んだ「MVアグスタ」のブランドは、イタリアのみならず世界中から惜しまれつつも市場から完全に消えてしまいました。

カジバグループによるMVアグスタブランドの復興


日本製のバイクが世界の市場やレースを圧巻する中、1992年に当時ヨーロッパで唯一オートバイ業界で好調だったカジバグループが「MVアグスタ」の商標権を獲得したと発表したのです。

これには世界中が驚きました。

完全に市場から消え去った伝説のブランド「MVアグスタ」をどうやって蘇らせるか、カジバグループを率いるクラウディオ・カステリオーニの動向に注目しました。

当時クラウディオ・カステリオーニは経営状態のあまり良くないオートバイメーカーを次々と買収しており、既に「アエルマッキ」、「ドゥカティ」、「ハスクバーナ」、「モトモリーニ」という名だたるブランドを獲得し巨大オートバイメーカーとなっていました。

出典:cyclecanadaweb

『F4』 誕生まで


1992年の商標権の獲得からカジバは、「MVアグスタ」ブランドを現代にどうやって再興するか数年にわたり頭を悩ませます。
50年代から70年代までレースで世界を圧巻し、市場にその高性能を強烈に印象付け、レーサー譲りの高性能な並列4気筒の市販車はオートバイ乗りの憧れの的であったのです。簡単にそのブランドに見合うバイクを作るのは困難でした。

数年にわたりMVアグスタのブランド復興のプロジェクトは試行錯誤します。
そしてエンジンに関してはイタリアの誇るフェラーリのエンジニアによる支援を受けたり、WGPで優勝も果たしたカジバGP500レーサーの車体のフィードバックをしたり努力を重ねました。
その努力に加え最大の貢献は、1994年にドゥカティ916のデザインを手がけ世界中から称賛を集めたマッシモ・タンブリーニがそのプロジェクトに加わったことでしょう。

クラウディオ・カスティリオーニとマッシモ・タンブリーニ
出典:motonotizie

「F4 Serie Oro」


1997年のミラノショーで『F4』のプロトタイプがお披露目されました。
MVアグスタの復活を懐疑的な目で見ていた者は、その美しい造形と品質に驚き、まさしく50年代から70年代まで活躍した「王者MVアグスタ」の現代版であると賛辞を贈る事となりました。

出典:mv-agusta.jp

そして、そのマッシモ・タンブリーニが設計したF4は1999年に「F4 Serie Oro(セリエオーロ)」という名前で、世界限定300台日本国内限定25台の限定車として発売されました。

出典:wikipedia/MV_Agusta_F4_series

2000年にはスタンダードモデルの「F4S」を発売。
その後、少しづつバージョンを変えながらF4シリーズは次々と発売されていきます。

揺れ動く経営


自動車業界、オートバイ業界に限らず、実に様々な資本提携や吸収合併、買収の話題は絶えません。
特に90年代くらいから業界の再編が加速し、メーカーとしての強者と弱者の差がはっきりと資本関係に現れた時期でしょう。
ブランド復活後のMVアグスタは、時代の波に翻弄されるかのように、様々な会社からの買収や売却を繰り返します。

2004年 – プロトンが7000万ユーロで買収する。
2005年 – 伊GEVI社に1ユーロで売却される。
2007年 – ハスクバーナをBMWに売却する。
2008年 – 経営悪化によりハーレーダビッドソンに1億900万ドルで買収される事で合意。
2009年 – ハーレーダビッドソンが売却を発表。
2010年 – カジバ買収直後のオーナー一族による経営に復帰。
2016年3月 – 4000万ユーロの負債を抱えて倒産処理手続中。

出典:wikipedia/MV Agusta


ジョヴァンニ・カスティリオーニ MVアグスタ会長兼筆頭株主
出典:MOTO.IT

1992年のMVアグスタ復興はカジバグループが商標権を買い取っただけなので、創業時の航空機メーカーであるアグスタ社(現在はアグスタウェストランド社)とは現在全く資本関係にはありません。
MVアグスタの親会社であったアグスタ社は、現在もヘリコプターを主力に航空機産業で活躍しています。

日本でも活躍する「アグスタ」製ヘリコプター(アグスタA109)
出典:wikipedia/agusta A109

現在の車両ラインナップ


現在は「F4」以外にも三気筒モデルの「F3」や、ネイキッドタイプの「ブレターレシリーズ」。そしてこれまでは無かった分野のモデルも多く追加されています。
現在ラインナップされているシリーズは以下の通りです。
・F4シリーズ
・F3シリーズ
・ブルターレシリーズ
・リヴァーレシリーズ
・ツーリズモベローチェシリーズ
・ストラダーレシリーズ

出典:mv-agusta

2016年型 新型F4「F4Z」の発表


2016年3月の倒産処理手続前から、新型F4の発表を9月4日に行うとインフォメーションしていましたが、現在のところ発表まで間近となりましたが予定通り発表されるようです。

出典:cycleworld

まとめ


本年3月の倒産報道によれば、MVアグスタは2015年は2014年に対し売上は30%増と成長しており、約1億ユーロの収益があったと報じられています。
しかしながら、一方で4000万ユーロの負債を抱えているとのことで、今回の倒産報道がありました。

これまで幾多の買収や吸収にもまれてきながらも、この「走る工芸品」や「走る宝石」と呼ばれたMVアグスタは生き残ってきました。
今回も9月4日につつがなく新型F4が発表され、今後もこのブランドが生き残ることに期待したいと思います。

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