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鬼才マッシモ・タンブリーニの逸品『DUCATI916シリーズ』【ドゥカティスーパーバイク】【スーパーバイク世界選手権】

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ドゥカティのスーパーバイクシリーズの中で、今でも色あせぬ輝きを持ち「マッシモ・タンブリーニの傑作」と呼ばれるモデルが、1994年に発売された916に始まる916、996、998の916シリーズです。
その開発背景や各モデルの詳細をご紹介します。

出典:moto.zombdrive

916開発の背景


ヨーロッパのオートバイ市場での販売台数は、レースでの活躍による影響を受けることが多いのが特徴の一つでもあります。
ドゥカティは車両販売拡大のために、1988年より新たにスタートしたスーパーバイク世界選手権を制覇することを目標としました。

そして1988年に「851」を発売。1992年には「888」を発売。
スーパーバイク世界選手権にて1990年から1992年まで3年連続チャンピオンを獲得することに成功します。
そのレースでの速さとレースに徹した造りを武器に851と888は販路を拡大していきました。

しかし1993年にスーパーバイク世界選手権のチャンピオンの座をカワサキに明け渡してしまったこともあり、1994年には888に代わる全く新しいモデルを発売する事としました。
その全く新しいモデルが916なのです。

◆写真は888の最終型 1993年式 888SP5

出典:moto.zombdrive

◆写真は1990年スーパーバイク世界選手権でチャンピオンとなった、元GPライダーのレイモン・ロッシュ

出典:ducati/history

916(1994年~1998年)


それまでレースで築き上げた851と888のイメージと人気を超えるため、また日本の4メーカーの水冷並列4気筒の速さに対抗するためには、全く新しいスーパーバイクモデルを作る必要がありました。
ドゥカティの基本レイアウトである「L型デスモドロミックエンジン」や「鋼管トレリスフレーム」という部分に変更を加える事はありませんが、全てを新しく設計し直すこととしました。

その総指揮を取ったのが当時のドゥカティの経営権を持っていたカジバグループに在籍していた鬼才マッシモ・タンブリーニでした。マッシモ・タンブリーニはビモータの設立者の1人で、彼がビモータを去るまで設計を一手に引き受けていた人物で、1983年にカジバに移籍した設計者です。

出典:wikipedia/マッシモ・タンブリーニ

916は徹底的な軽量化からはじめられました。
Lツインの特徴を生かすためフレームの形状もまったく変わり全幅はかなり細くなり、それまでの851、888のグラマーなデザインから大きくシェイプアップされました。
その細さは今日のドゥカティ・スーパーバイクシリーズの基礎となったモデルといえるでしょう。
エンジン、フレーム、足回りとすべてが新しくなり、その一つ一つを解説するとものすごい量になってしまうので割愛しますが、とにかく916は全てを新しくした結果「トータルデザインが逸品であった」の一言に尽きるのではないでしょうか。

発表時の各モーターサイクルショーでは「世界で一番美しいバイク」と評されました。

その独特のデザインである「左右別体ヘッドライト」「片持ちスイングアーム」「センターアップのマフラー」は今ではどれも目新しいものではありませんが、当時は画期的で独創的でした。

【916に設定されたモデル】
◆916SP
サスペンションやブレーキ関係をグレードアップしたモデル。

出典:moto.zombdrive

◆916SPS
996ccへ排気量アップ。
後に発売される996のエンジンを先行で積んだモデルで、1998年シーズンのスーパーバイク世界選手権でのポテンシャルアップの為に「916SPS」として限定的に発売されました。

出典:moto.zombdrive

◆916 Senna&SennaⅡ
F1ドライバーの故アイルトン・セナの名前を取ったモデルです。
ドゥカティ好きだったセナがドゥカティに特別仕様の916を作成してもらった経緯から、そのレプリカとして発売されたものです。


出典:moto.zombdrive

【スーパーバイク世界選手権での戦績】
1994年:年間チャンピオン獲得(カール・フォガティ)
1995年:年間チャンピオン獲得(カール・フォガティ)
1996年:年間チャンピオン獲得(トロイ・コーサー)
1997年:ランキング2位(カール・フォガティ)
1998年:年間チャンピオン獲得(カール・フォガティ)

◆1994年度シリーズチャンピオン:カール・フォガティ

出典:ducati/history

◆1995年度シリーズチャンピオン:カール・フォガティ

出典:ducati/history

◆1996年度シリーズチャンピオン:トロイ・コーサー

出典:ducati/history

996(1998年~2001年)


1998年シーズンのスーパーバイク世界選手権に投入された916SPSの新型996ccエンジンを使用し、モデル名を「996」と改め1998年から 2001年にかけて製造・販売されました。
“ドゥカティ=スーパーバイク”という印象を世界中にしらしめた916シリーズの進化版で、排気量のアップだけではなく細かい部分での信頼性や安定性が向上したモデルです。

出典:moto.zombdrive

また2003年に公開され大ヒットした映画「マトリックス リローデッド」に出てくるドゥカティがこの「996」です。
映画を見たバイクを知らない人たちからも「あのバイク、かっこいいね」という声も当時よく聞かれたとか。996が出てくるのは高速道路でのアクションシーンなのですが、映画の製作サイドがどの程度ドゥカティを理解しているかはさておき、たくさんの車を次々とすり抜ける際の小気味よい鋭い切り返しは「この動きはドカならではの動きだな!」と筆者はニヤッとしてしまいました。
これは映画の中のアクションシーンですので、996を手に入れたとしても高速道路での無謀なすり抜けはくれぐれも真似はなさらぬよう・・・。

【996に設定されたモデル】
◆996S
サスペンションやブレーキ関係をグレードアップしたモデル。

出典:moto.zombdrive

◆996R
従来「SPS」と表記されていたスーパーバイクレースのベースモデル(ホモロゲーションモデル)を「R」と表記するようになったのは996Rからです。

出典:moto.zombdrive

《スーパーバイク世界選手権での戦績》
1999年:年間チャンピオン獲得(カール・フォガティ)
2000年:ランキング6位(トロイ・ベイリス)
2001年:年間チャンピオン獲得(トロイ・ベイリス)

◆1999年度シリーズチャンピオン:カール・フォガティ

出典:ducati/history
◆2000年度ランキング6位:トロイ・ベイリス

出典:racingphoto.tripod

◆2001年度シリーズチャンピオン:トロイ・ベイリス

出典:racingphoto.tripod

◆2001年度シリーズチャンピオン:トロイ・ベイリス

出典:racingphoto.tripod

998(2002年~2003年)


916から進化した996でも破竹の勢いで年間チャンピオンを獲得してきました。
しかしライバルのホンダがドゥカティ打倒のために2000年に投入してきた新型Vツインモデル”VTR1000SP”対策のためにも、市販車の更なるポテンシャルアップの必要が出てきました。
そこで登場するのが916シリーズ最後のモデルとなる「998」です。

出典:moto.zombdrive

998は2002年のスーパーバイク世界選手権のホモロゲーションを取るために発売されたといっても過言ではないでしょう。発売期間も916シリーズ中で最も短い2年間だけで、レースに998として出場したのは2002年シーズンだけです。

しかし2002年のスーパーバイク世界選手権では、ホンダがさらにポテンシャルアップをさせて投入してきたVTR1000SP-2を前にチャンピオンを取ることはできませんでした。
998は916シリーズで唯一チャンピオンマシンとなれなかったモデルです。

【998に設定されたモデル】
◆998マトリックスエディション
映画「マトリックス リローデッド」に出てきたカラーリングを再現した限定モデルです。

出典:moto.zombdrive

◆998S
従来通り、足回りやブレーキ等がグレードアップされたモデルです。

出典:moto.zombdrive

また以下の2車種のチャンピオン記念モデルも発売されました。
998Sトロイ・ベイリスレプリカ
998Sベン・ボストロムレプリカ

◆998R(ホモロゲーションモデル)

出典:moto.zombdrive

◆998Rファイナルエディション
2003年に最後の998として抽選で発売。

【スーパーバイク世界選手権での戦績】
2002年:ランキング2位(トロイ・ベイリス)

出典:racingphoto.tripod

出典:racingphoto.tripod

出典:racingphoto.tripod

まとめ


2002年のスーパーバイク世界選手権でホンダのVTR1000SP-2を前にタイトルを失ったドゥカティは、販売も好調であった916シリーズを終わりにする決断を迫られました。ドゥカティにとってのバイク造りとは、レースでの成績が非常に重要なファクターなのです。
時代とともに薄れてはきましたが、ドゥカティのバイクというものは「レーサーそのものである」という原点は忘れられる事は無いようです。

また1999年にカジバグループがドゥカティ社を売却したことで、916シリーズを指揮し商業的にもレース的にも大成功させたマッシモ・タンブリーニが新たにドゥカティの設計をすることはできなくなりました。
2003年からのスーパーバイクシリーズの作成はピエール・テルブランチに一任され、彼は大きな苦悩と共に「999」を生み出すこととなるのです。

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